『どうぶつのくに』『どうぶつえんとすいぞくかん』 制作発行責任者 田井基文 様 :「Tanukitour」ご推薦文





私の祖母は、信楽焼のたぬきの大ファンであった。
一般に言う「他(た)を抜く」という言葉の縁起の良さもあっただろうが、
特に、信楽焼のたぬきだけが持つ「八相縁喜」について
よく話して聞かせてくれた記憶がある。


・ 災難から身を守る笠
・ 気を配り物事を正しく見る目
・ 愛想のいい顔
・ 飲食に困らない徳利
・ 世渡りと信用の通(帳面)
・ 落ち着きと大胆さの大きな腹
・ 金運に恵まれる金袋(玉袋)
・ 物事の終わりはしっかりとの大きな尾


どれもまだまだ未熟な私には手の届きそうにない要素ばかりであるが、
こうして曲がりなりにもたぬき他、どうぶつたちと関わる
仕事をするようになったことで今回光栄にも「Tanukitour」へのエールを
お送りさせていただくことと相なった。


「Tanukitour」は、この「八相縁喜」を体現できる企画と感じている。
参加アーティストたちや、地元信楽でこの企画を支えてくれているひとたちによる多くの個性が、
八相どころか、十相、百相、と、参加人数分だけの相によって信楽焼のたぬきたちが色々な表情を見せる。
住み慣れた信楽の街を離れ、江戸の街でその魅力をいかんなく発揮してくれるはずである。


一方で、これは本物のたぬきの生態についても少し皆さんに知っていただくいい機会と考える。
ライフスタイルを変えた我々人間の手が入らなくなったことにより荒れた里山で、
たぬきたちは今、住処をどんどん狭くし続けている。


太古の昔から多くの逸話、謡、あるいは落語などのモチーフとしても大活躍してきた、
つまりそれだけ我々人間にとって身近な存在として、
ともに暮らしてきたたぬきたちの愛らしい姿を、弊誌を通じてご覧いただき、
そんなたぬきたちの厳しい暮らしにもほんの束の間で結構、思いを馳せていただければ幸甚である。


最後に、信楽の里で、野生のたぬきたちがいつまでも元気で暮らせることをお祈りして。




どうぶつのくに』『どうぶつえんとすいぞくかん
制作発行責任者 田井基文